第4章 蓋
お風呂から上がり、部屋に戻って由希に巻いてもらったサランラップを外してみると、隙間から水が入っていたようで包帯が濡れていた。
まぁ、どっちみち消毒もしなきゃだし新しいのに変えるかー。と包帯をゆっくり外していく。
中のガーゼも慎重に剥がすと、赤黒く変色した痛々しい傷が露わになり、あまり自分では直視出来なかった。
自分でこの傷に触るの嫌だなー…。
でも誰かにしてもらうのも何だか申し訳ないし…。
仕方ない。やるしかないか。
救急箱…確か洗面所の棚にあったっけ…。
部屋を出て救急箱を取りに行こうとした時、同じく自分の部屋から出てきた夾とパチッと視線があった。
わお。超気まずい。
夾は夕方、帰ってきて私と由希を見るなり猫が威嚇をするように怒り出した。
ダブルデートの途中に勝手に抜け出したことに大層ご立腹で。
「お前ら勝手に帰りやがって!!ふざけんなよ!!」と眉間に濃いシワを寄せて怒っていた。
由希は悪びれた様子もなく彼の怒りをフルシカトしていたが、確かに何も言わずに勝手に帰ったことはよくない事で…。
私はなんだか申し訳なくて謝ろうと思ったが、夕飯中もずっと不貞腐れて目も合わせてくれない夾に何も言えずにいた。
そして、今。
私を見る夾はやっぱり不機嫌そうに眉間に濃いシワを寄せている。
「き、夾…えっと…」
「お前、今すぐ部屋戻れ」
夾は冷たく私にそう言うと、そのまま階段を降りて行った。
え?なに?
お前の顔も見たくないってこと?
普通に傷つくんですが?
確かに悪いのは私だけど…。
それにしてもあんな言い方しなくたって…いいじゃん。
ショックを受けていた私は夾に言われた通りに部屋に戻り、ローテーブルの前に座ってテーブルに頬を預けて項垂れた。
トントントンと夾のものであろう足音が階段を登ってくる音が聞こえ、彼が部屋に戻り次第救急箱を調達しに行こう。とボーっと考える。
ガチャッと扉が開く音がして、彼が自分の部屋を開けたにしてはやたら音が大きくてパッと顔を上げると夾が救急箱を持って、そこに立っていた。
予想外のことに私が目をパチパチさせていると「なんて顔してんだよ」と不器用に笑って私の横に胡座をかいて座る。
「それ、みせろ」
「へ?」
間抜けな声でしてしまった返事に夾はまた不機嫌な顔を私に向けた。