第22章 そして私は人類の敵になる
熟考した結果、非常に困ったことに……私は全てを失うことになっても無惨様の傍に居たいようだ。
例え、世界中を敵に回しても構わない。世界にとって無惨様が、滅されるべき害悪だとしても構わない。私が心から愛せるのは、この男しか居ないらしい。
「心の声に嘘はない、か……」
「私は無惨様に大変なご無礼を働きました。私の命など、どうぞご随意に。それでも私は、最後まで貴方を愛しています」
「………………」
長い沈黙。その末に無惨様は、大きな溜め息を吐いてこう言った。
「はあ…………。もういい。顔を上げろ」
「え……」
「貴様の間抜けな様を見ていると、どうでも良くなった。考えてみれば、人間など誰を喰っても同じだ。稀血でもないあんな男にこだわる必要はない」
それから無惨様は私を抱き上げて起こし、腕を拾ってくっつけてくれた。許してもらえた……ということなんだろうか。私の誠意は、伝わったということなんだろうか。
「食事をする。適当なところに連れていけ」
「あ、は、はい……!」
そそくさと彼の手を握って転移する。すぐに、頭に思い描いたままの路地裏に到着した。
「まだ誰も居ないが……じきに来るな」
「はい……」
私は知らず知らずのうちにこういう、食事に都合のいい場所がなんとなくわかるようになっていた。本当に、マジでチートだ。完全犯罪をするにはもってこいの能力だ。
しばらく待っていると、間もなく人間が連れ立って四人ほど歩いてきたが――
無惨様が一切の躊躇なく異形の手を振るうと、彼らはごきゃごきゃという音を立てて吸収されていった。