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無惨様、令和に降臨す【鬼滅の刃】

第22章 そして私は人類の敵になる


 人気のない森の中に転移したと思ったら、私はすぐさま10メートルぐらい吹っ飛んだ。言うまでもなく、無惨様に弾き飛ばされたのだ。

「う……ぐ……」
 口の中が切れて、右腕も取れた。拾い上げてくっつけようとしていると、歩み寄ってきた無惨様にぐしゃっと踏みつけられてしまった。
 腕、痛い。身体から離れていても痛みを感じるんだ……。

「貴様、いい度胸をしているな」
「ごっ、ごめんなさいごめんなさい!!」
「可愛がってやっていたのに……仇で返すか?」
 そう言って無惨様は、私の頭を掴んで深々と爪を立てた。今までにないぐらい、本気でキレてる。……主君に楯突いたのだから、当然だけど。

「何故私の邪魔をした。あの男に気があるからか?」
「違います! そうじゃなくて……!」

 何故って、何故って。先輩のことが好きだからって理由じゃないことは、心を読める無惨様にはわかるはずなのに。無惨様は爪をさらに深く突き立て、脳を抉りながら顔を私に近付ける。座った目で見つめられると、背筋に冷たい汗が流れた。

「答えろ。返答によっては殺す」
「あの人を殺したら、私、会社に居られなくなってしまいます。だから……!」
「そんな理由か? 違うだろう」
「うぅ……。それは……それは……」

 心を読めるのに、どうして言わせるのだろう。涙がこぼれそうなのを必死にこらえて、私は続けた。

「鬼が、人を食べないといけないのは、わかってます。わかってるつもりでした。無惨様が、誰を食べて頂いても構わないって思ってました。でも、でも……知り合いだけは、知り合いが目の前で死ぬのは、やっぱり嫌なんです……」

 命の重さに違いなんかない。そんなこと、私もわかっている。知らない人は良くて知り合いはダメなんて、そんなのただのエゴだ。身勝手だってわかっているのに。

 それでも、先輩が殺されると思った瞬間、嫌だと思ってしまった。それは、彼が私に好意を向けてくれていたからでは決してない。単に、今まで長い間一緒に働いた情のようなものがあったのだろう。
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