第21章 無惨様、ヤンデレになる?
一人でシャワーを浴びながら、私は妙な不安に駆られていた。
(無惨様、大丈夫かな。このまま死んじゃったりしないよね……?)
ふとそんな考えが頭を過って、すぐに首をぶんぶんと横に振った。
無惨様は1000年以上も生きてて、大勢の鬼殺隊が彼に挑んでも勝てなかった超チート存在だ。いきなり死ぬなんてありえるはずもない。
まあ、無惨様が死ぬ時は私も死ぬ時だから……そうなったらそうなったで別に構わないんだけど。
しかし、そんな私の杞憂は一瞬で吹き飛ぶことになる。突然浴室のドアが勢いよく開いて、一糸纏わぬ姿のままの無惨様が現れたのだ。
「おい、貴様」
「うわぁっ!」
「何故シャワーを浴びている。終わりだとは言ってないだろう?」
「ええっ!? も、もう朝ですよ。それに、私これから仕事しないと――」
「知らん。口答えするな」
無惨様はずかずかと浴室に入り込んできて、勝手にシャワーを止めた。それから私の手を壁に突かせると、背中にぴったりとくっついてきた。
「や、嫌です、お風呂でするの! ってか私、もうこれ以上無理――」
「いくらでも相手をすると言ったのは嘘だったのか?」
と、その時、肩に刺すような痛み。牙を立てて吸い痕……じゃなくて、噛み痕を付けようとしているんだ。
「いたた、痛いです!」
「私のことを愛しているなら耐えられるだろう」
そんなことを言いながら、また腕に噛み痕を残す。痛いって! 愛してるから、耐えるけどさ!
なんていうか、無惨様って、あれだ。そう、ヤンデレ。
……いや、『デレ』はないか。単に独占欲の塊? 孤独を拗らせて、愛されている証明がほしくてたまらない感じ?
と、ここまで考えて、思考を読まれるので打ち切った。だけど、無惨様には気にする様子もない。令和に慣れてきた彼だけど、「ヤンデレ」はまだちょっと難しい言葉だったか。