第20章 全てを差し出そう
(無惨様って、実は物凄く寂しいのかな。愛されていると感じたことがないのかな。……千年も一人で生きてたら、そりゃ寂しいよね。もうそんな感情も、なくなってしまってるかもしれないけど……)
支配が解けてなお、私はやっぱり、この孤独な生命を助けたい。永遠に傍に居たいと思ってしまった。
(もう二度と、寂しいなんて思わせないから。……ね?)
と、ここまで考えてしまって、心の声は変わらず読まれていることを思い出した。こんな上から目線の感情は、彼にとって不愉快極まりないものだろう。
「あ、無惨様! 今のは違いますからっ――」
また首を飛ばされるかもしれないと思って、思わず目を瞑った。
だけど、彼は返事をしなかった。恐る恐る目を開けてみる。そして、そこに在った光景に……私は愕然としてしまった。
「え? 無惨、さま……?」
彼はベッドに横たわり……眠っていた。近寄ってみても、起きる気配がない。以前のように寝たふりをしているわけでもなさそうだ。
「うそ……疲れた、の……? 鬼は眠らなくても大丈夫って言ってたんじゃ……?」
あんなに激しくしたら、さすがに眠くなっちゃうってことなのかな……。
軽くベッドを整えて無惨様に布団を掛けながら、私は妙な胸騒ぎがしていた。
(大丈夫……だよね? ずっと一緒に居られるよね? この先も、ずっと……)
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