第20章 全てを差し出そう
私は確かに、無惨様を愛していた。だけどそれは、少なからず彼に思考を支配されているからなんだろうと思っていたし、それで構わないとも思っていたのに。
「さて……裸のお前の心を聞かせろ。お前は、まだ私を愛しているのか?」
「う……」
「どうなんだ? 言ってみろ」
「あ、あたし、は……」
……ああ。感極まって、涙が頬を伝う。
私は彼に血を与えられたから、彼に細胞レベルで逆らえないから、愛してしまっていたわけではなかったんだ。
「あたしは、それでも貴方を愛しています。無惨様……この世でたったひとり、貴方だけを」
「ふ……そうか。ならば、耐えてみろ。今宵だけは私もお前のものだ。『愛してやろう』」
「……っ!」
無惨様は、最後に蕾をもう一度舐めると、腰を掴んで私の身体を反転させる。崩れた体勢を整えるより先に、背後から大きく突き上げられた。
「やあぁっ……!」
バランスを失った私の足を掴んで持ち上げ、さらに奥に捩じ込む。捻りながら何度も肉壁をこすり、私の中を蹂躙していく――
人間だったらとっくに気絶していただろう。胃液を吐きそうなほどの突き上げの連続にすら、快感を覚えるようになってしまった。
「あぁあ……好きです、愛しています、無惨様……」
「知っていると言うに」
……それから無惨様は、本当に一晩中私を抱いた。
何回射精されたかも、わからない。自分が何回達したかも、わからない。
やっと解放してくれた頃には、すっかり明け方になっていた。
ベッドはぐちゃぐちゃ、どちらのものともつかない体液があちこちに付着している。シャワーでも浴びようと立ち上がったところで、ごぷっという音を立てて、身体の奥から白濁が溢れてきた。
……身体中が痛い。鬼なのに痛みが収まらない。無惨様は、私の細胞を傷付けながら抱いたんだ。
彼はきっと、最後に残った部下の私を、試したかったのだろう。
呪いが解けた後、彼の傍に残った鬼はいなかった。暴力的に抱いたのも、支配を解いてみたのも、私が本当に自分を愛しているのか確かめたかったんだ。
……無惨様は、馬鹿だ。そんなことをしなくても、私はいなくなったりしないのに。