第20章 全てを差し出そう
今夜の無惨様は、やたらと昂っていた。……ううん、ちょっと違うか。いつものような余裕がなく、動物的だった。難しいことを何も考えたくない気分だったのだろう。
私の腕を押さえて腰を打ち付ける無惨様の身体には、じっとりと汗が滲んでいる。彼が汗をかくところを、私は初めて見たかもしれない。
最奥まで抉るように捻じ込み突き上げる、激しい反復運動。胃が押し上げられる感覚に私は何度も吐きそうになりながらも、酷く暴力的な律動を受け止めていた。
たぶん無惨様は、珍しく混乱している。鬼たちの呪いが解け、自分の築いてきたものが崩壊している現実を受け止めきれていないのだ。
たった一人残された配下である私という存在に、怒りや焦燥、落胆……全てをぶつけなければ正常で居られない。おそらく、そういうことなんだろう。
この破壊衝動の理由に、無惨様は気付いていないと思う。気付きたくないから、あくまで私に褒美を与えるという体を保った。
だけど私は、全てを受け入れると決めた。彼が私を捌け口とすることで精神を保てるのならば……私は喜んで貴方に全てを差し出そう。
無惨様の言う通り、私はマゾヒストなのかもしれない。こんなに乱暴にされているのに、色んなところが痛いのに、必要とされていると思うとそれだけで感じてしまう。
「ああ……締まる。これだけ達して、まだ締め付けを保てるか」
「……いくらでも、お相手いたしますよ。無惨様の、お望みの限り。だってあたしは……貴方を愛していますから」
「知っている」
無惨様はそのまま、私の胸に唇を付けた。あちこちを強く吸いながら律動を速め――無数の痕を咲かせて、最奥で果てた。
「あぁ……無惨、さま……」
共に達した私は、熱く流れ出てくる体液を感じて熱に浮かされる。快楽の余韻に呼吸を整えていると、無惨様はすぐに自身のものを引き抜いて、私の脚を持ち上げた。……まだ、続けるつもりなんだ。