第19章 褒美をくれてやる
間もなく唇をこじ開けられ、舌を挿れられた。そのまま粘っこく歯列をなぞられるだけで、身体に甘い痺れが走った。
「やっ、んうう……」
一通りなぞり終えたかと思うと、口腔に舌を戻し、捲り上げるように絡める。絡めては吸って、喉の奥に押し込んだと思ったら少し引き抜いて、また舐め回して。これだけでも達してしまいそうなのに、無惨様は口内を犯すのを止めないままに私の下着の中に手を這わせてきた。
「……この程度でもう準備ができたのか?」
「ち、違う……!」
「違わないだろう? 下着を脱げ。脱がないと濡れてしまうぞ?」
無惨様が舌を引き抜くと、二人の間に糸が引いて……彼はそれをわざとらしく舐め取って意地悪な笑みを見せた。
紅い目が、私を捉えて離さない。……ああ、頭がくらくらしてしまう。
「今宵は気分が良い。一晩中お前を抱いてやろう」
「ああ……。ありがとうございます、無惨様……。……って、一晩中!?」
「何か問題でも?」
「えっと、いえー……」
……もつかな、私の身体。
そりゃ私は鬼だし、人間の時とは比べ物にならないぐらい体力はあるけど。
無惨様の顔は、完全に捕食者のそれだった。褒美を与えるという名目で、私は彼の気まぐれな欲望の捌け口にされているんじゃ……?
「だがお前は、それが心地良いんだろう? 私の暴力や欲望の受け皿になることに、快感を覚えている。お前のような者を……そうだ、マゾヒストというらしいな?」
「へ、変な言葉は覚えなくていいですからっ……!」
ああもう、心を読める相手に敵うはずなんてない。もう、腹を括った。一晩でも一日中でも、私はいくらでもお付き合いいたします。それが、十二鬼月の使命…………なのかどうかは、わからないけれど。
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