第19章 褒美をくれてやる
……それから私は、何度も血鬼術を試す羽目になった。散々こき使われてやっと家に帰ってきた時には、すっかりヘトヘトになっていた。
たくさん使ってみて、わかったことがある。それは、写真や画像は想像を補うための材料でしかないということ。私の脳内に鮮明なイメージがある場所へなら、写真などがなくても飛ぶことができるようだ。
「やばい、これ、めっちゃ便利だ。どんな敵が来ても触れさえすれば遠いところに飛ばしちゃえるし……。会社にもテレポートすれば、晴れの日でも出勤できたり……?」
手に入れたチート能力に歓喜していると、突然ふわりと頭に手が乗せられた。
「……良くやった」
「へっ?」
気付くと、そのまま頭を撫でられていた。あまりの衝撃で、私は目をぱちくりさせてしまった。『良くやった』って……無惨様がまさかそんなことを言うなんて。
「お前を拾って正解だった。お前には何の異能も期待していなかったのだがな」
「え、ええ……?」
そのまま抱き寄せられ、腕の中に納められると身体が熱くなった。いつものように、からかわれているわけではないと直感したから……だろうか。
「な、なんか無惨様が素直にあたしを褒めるのって初めてですね」
「今まで褒めるところがなかっただけの話だ。私は全てを正当に評価している」
「で、ですよね。無惨様はいつも正しいし、何も間違えません……」
「褒美をくれてやる」
「え……」
ほ、褒美って、どういう――と考える暇もなく、唇が塞がれた。
「お前には、これが一番だろう?」