第18章 血鬼術
「さーて、そろそろくたばる頃かぁ?」
「う、ぐ……」
……私は、いつの間にか地面に突っ伏しているみたいだった。首を締められすぎて、力が入らない。目の前がぼーっとする。
「下弦の壱も大したことねえなぁ。鬼舞辻も弱体化して、この程度の鬼しか作れねぇってことか!」
「…………」
……私、こんなところで死ぬのか。そりゃあこの間、『いつ死んでもいい』なんて思っちゃったりしたけどさ。
よりによって、こんなやつに吸収されて終わるなんて。死んで、力を与えてしまうなんて……。
無惨様は私が帰ってこなかったら、一瞬だけでも残念に思ってくれるかなぁ。……ううん。『役立たずだった』って思うだけなんだろうなぁ。
私はいつの間にか、平坦で安穏とした毎日が、いつまでも続くんだって思い込んでいた。まさかこんな一瞬で何もかも崩れ去ってしまうなんて、知るよしもなく――
(あーあ。温泉……行きたかったな……)
薄れゆく意識の中で、スマホにそっと手を伸ばす。思えば、無惨様との出会いもこのスマホがきっかけだった。
(……ああ。力及ばずで申し訳ございません……)
その時――
突如まばゆい光が閃き、私を包み込んだ。
「なっ、なんだ……? 何しやがったっ!?」
なんなんだろう、この感覚。身体がふわっとして、空に浮かんでいるような……?
「……へ?」
気付くと、私はさっきまでとは全然違う場所にいた。え、なにこれ。テレポート、した?
「貴様何をしたぁあ!?」
一緒にテレポートしてしまったらしい男は、突然の出来事に焦ったのか、私から手を放してしまった。首が解放されたことで、私はなんとか体勢を立て直すことができた。
(……大丈夫。あの大きな手さえ躱せれば、なんとかなるはず)
落ち着いて、周りをよく見てみる。知らないはずの場所には、なぜか見覚えがあった。