第17章 有効活用してやるよ
「色々と教えてくれて、ありがとう。じゃあね」
知りたかったことは知れた。だから私は、男に背を向けて歩き出していたのだが――
「……!?」
いきなり背中を貫かれ、吐血した。言うまでもなく、男に攻撃されたのだ。
「痛っ……なにすんのよ」
「いやぁ? オレからも聞きたいことがあるもんでさぁ」
体から男の手が引っこ抜かれると、傷はたちどころに回復した。……出勤用のスーツには大穴が空いてしまったけど。
「やー、やっぱすげぇ、さすがは十二鬼月。お嬢ちゃん、相当血ぃ分けてもらってんだろ」
「さあね。それで、聞きたいことって?」
「単刀直入に言うぜ。鬼舞辻無惨は生きてんのか?」
「……知らない」
残念だけど、その質問には答えられない。私はきびすを返すと、駅に向かって歩き始めた。……あーあ、服が血まみれになっちゃって、電車に無事に乗れるかな。
なんて、思っていると。
「知らねーわけがないだろうがぁあ!」
どういうわけか、男は突然キレた。私に向かって猛ダッシュしてきたかと思うと、また手を巨大化させて振りかぶってきた。
面倒臭いなと思いつつ、手を躱して男の懐に回り込む。腹を裂いて臓物を引きずり出し、よろめいたところに蹴りを入れると、男は尻餅をついた。
「う、うぐ……」
「あのさ。いい加減にしてよ。スーツ高いやつだから、弁償して下さい」
「クソッ、異能も使わずこの強さかよ……ざっけんなよ……」
「いいから、弁償して。あなたのお財布から、スーツ代いただくからね」
男の腰にぶら下がる、ウォレットチェーンに手を伸ばす。すると、あっけなくまた腕を斬られた。
「そんなズバズバやらないで。痛いのは痛いし、めちゃくちゃムカつくから」
腕を拾ってくっつける。ついでに、落としてしまったスマホも拾った。まったく、相手にしてられない。さっさと地下道を抜けて、人の多いところに出よう。そうしたらこいつも、下手に動けなくなるだろうから。