第2章 令和最初の鬼
「――はっ!」
「やっと目覚めたか。一応、私の血に順応はしたようだな」
「……んん?」
気付くと私は、人気のない公園のベンチにいた。暖かいものが体に触れているが、どうやら先程の男に抱きかかえられているようだ。
何? 私、倒れたの?
倒れてこの人に介抱してもらってたの……?
「あ、あの……。わたし、えっと……?」
「お前を鬼にした。もうお前は、普通の人間として生きていくことはできない」
「えぇ……」
この人、また鬼なんて言ってる。大丈夫かな。
「やがて腹が減り、人を食わずにはいられなくなる。血を飲ませておいたから、しばらくは保つだろうが」
血を飲ませる? そういえば、なんだか口の中に不快な鉄の味が広がっているような。
「お前にはこれから、この時代の情報を提供してもらう。私がある程度把握したと判断するまでは、生かしておいてやろう」
「んん~……?」
なんだか、頭がボーッとしている。私は確か、駅前にいたはずだ。友達と待ち合わせをしていたと思ったら、突然この変な男に話しかけられて――
「はっ! 飲み会っ!」
慌てて身を起こす。バッグは、自分の腕に掛けられていた。
「今何時なのっ!?」
スマホを取り出し、時間を確認する。……21時を少し回ったところ。待ち合わせの時間からは4時間も過ぎてしまっている。不在着信やメッセージが何件も来ているようだ。
「うわぁあ、 やばいやばい! 早くみんなに連絡しないと――」
「うるさい」
「へっ?」
瞬間、視界がぐるんと回転した。
……何? 私、宙に浮いてる……?
「うるさい女だ。苛々する。少しぐらい静かにできんのか」
「は……?」
頭が地面に打ち付けられ、遅れてドサッという音がした。音の方に目を向けると、頭のない私の体が地面に倒れている。
え……? 私の体……?
ぬめぬめと赤く光る断面を見ているうちに、男に首をはねられたのだと、やっと気がついた。