第15章 無惨様、メールに返信する
次の日――
「ふあぁ……おはよーございます……」
朝起きると、無惨様はまたインターネットをしていた。よく飽きないなと思うけど、彼の気持ちはわからなくもない。私も初めてパソコンを手に入れた時は、夜も眠らずにいじり倒したしなぁ。
「この、ゆーちゅーぶというものは、なかなか面白いな」
「……ふふっ」
今流行りの芸人のコントを流しながらそう呟いたのを見て、私は思わず笑ってしまった。
「私も好きですよ、そのコンビ」
……なんでもない朝が、緩やかに流れていく。私を勘違いさせるのに十分な――彼との平凡な日常が今日もここに在った。
今気付いたけど、無惨様は何だかんだ言って昨日私が買ってきた服を着てくれていた。……ほらね、やっぱり似合うじゃない。
「考えてみれば、服ぐらい何でもいいと思っただけだ」
と、思考を読まれて返事をされる。心の底からそう思っているのか、『着てやってもいいか』と思ってくれたのかはわからない。だけど、心を読むことのできない私は、都合のいいように解釈することにした。
今日、外の天気は晴れ。起きてすぐにチラッと確認すると、日光に炙られる前に雨戸を閉め直した。
「あの~。今日は家で仕事しなきゃいけないんで……そのパソコンを貸していただけたら助かるんですけど……」
こう言ってみて、『貸しても何も、もともと私のパソコンじゃん』と自分で突っ込んだ。だけど無惨様には、『返してほしい』と言い出しづらい威圧感があるのだ。