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無惨様、令和に降臨す【鬼滅の刃】

第13章 好きな人がいるんです


「はぁ。とりあえず戻ろ……」
 ――と、給湯室を出ようとすると、すれ違うように人が入ってきた。オフィスで私の斜め前の席に座っている、男の先輩だ。

「紡希ちゃん、大丈夫? なんだか様子が変だけど」
「そ、そうですか……?」
「なんかあった? 俺で良かったら相談に乗るよ」
「ありがとうございます。でも大丈夫です……」

 こうやって気にかけてくれるのは、素直に嬉しい。でも、『鬼になっちゃった』なんて、彼に相談してもどうにもならないからなぁ。

「じゃああたし、そろそろ戻りますね……」
「待って」
 そそくさと退室しようとすると、なぜか呼び止められてしまった。まだ何か用があるのだろうか。

「紡希ちゃん、あのさ」
「はい?」
「こんなところで言うのもなんだけど……。俺、紡希ちゃんのこと、前からいいなって思ってて」
「んん……? それって、どういう……?」
「だからその……。他に彼氏とかいないんだったら、俺と付き合ってほしいなって……」
「へ……?」

 えっと……。これ、どういう状況?

 目の前には、ほのかに顔を赤らめて、決まり悪そうに頭を掻いている先輩がいる。

 付き合うって、もしかして私と……?

「えぇえええっ!?」
「そ、そんな驚くこと? 俺、前から割とアピールしてた気がするんだけど……」
「す、すみません。まったく気付かなくて……!」
「まじかー……へこむなー……」

 しょげ返る先輩の顔を、私はただまじまじと見つめることしかできなかった。
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