第11章 無惨様、はじめてのインターネット
無惨様には、まだまだ知らない言葉がたくさんあるみたいだ。一体、どこからどう説明したらいいのか迷ってしまう。
「なにやら、ごちゃごちゃしているな。調べ物をするには、どうすれば良い?」
「ここに調べたいことを入力して、『検索』を押してみて下さい」
「ふむ……文字は、この鍵盤で入力する、と」
「あ、はい。ローマ字で……」
「タイプライターに酷似している。文献でしか見たことはなかったが」
「それです! スマホが電話の進化系なら、パソコンはタイプライターの進化系と思って頂けたらと!」
「成程……」
厳密に言うとちょっと違うけど、そこは話すと長くなるから許してもらおう。辿々しい手付きでキーボードを打つ無惨様を、私は孫を見るような目で見守っていた。
「おかしい……。鬼狩りどもの情報が全く出てこない」
「それはそうですよ。だって鬼殺隊は、政府には正式に認められていない組織だったんですよね? ソースがどこにもないんじゃないでしょうか」
「ふうむ……」
首を捻る無惨様だったけれど、私はひとつの可能性を考えていた。大正時代からは、たかだか100年ちょっとしか経っていないわけだし……形を変えて今も密かに残っているかもしれない。
もし、現代にも鬼殺隊が存在するなら……いつか無惨様を倒しにやってきたりするんだろうか。
そうなったら私は、彼のために闘わなければならない。人間を殺したくないなんて泣き言、言っていられなくなるだろう。
来たるべき闘いの時に備えて、私は血液パックを大量に開け、飲み干した。血を飲むと、強くなったのが実感できる。いっぱい飲んで、少しでも強くならなきゃ。
……と、こんなふうに決意を固めていたところで、無惨様にトントンと肩を叩かれた。
「この、『うぃきぺでぃあ』というものは、なかなか便利だな。電子広辞苑といったところか?」
「…………」
ああ、なんだか脱力した。現代に鬼殺隊がいたところで、こんな状態の無惨様をわざわざ倒しに来るわけないか。
「無惨様。ネットに書かれてることをうのみにしちゃダメですからね? インターネットは誰でも情報が発信できるんです。書かれてることが全て正しいとは限りませんから――」
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