第11章 無惨様、はじめてのインターネット
とはいえ、新生・十二鬼月の第一号である私が、主君に逆えるはずもない。仕方なく、ローテーブルと座椅子を使って仕事を始めることにした。
(はぁ~……。座椅子って疲れるんだよね。絶対、足がパンパンになるよ。……あ、でも、鬼だから平気なのかな……?)
そんなことを考えつつも、ノートパソコンをケースから取り出す。おもむろにテーブルに置いて蓋を開けたところで、無惨様はページをめくる手をぴたりと止めていた。
「む、それは……パーソナル・コンピュータというやつだな」
「ぶふっ!」
「何が可笑しい」
「い、いえ!」
笑ってはいけないと思いつつも、ついつい吹き出してしまった。まるで、おじいちゃんが一生懸命最近の言葉を覚えようとしてるみたいで――って、そのまんまか。無惨様は1000歳超えの、超・おじいちゃんだ。
「そのパーソナル・コンピュータ、スマートフォンと同じで、色々なことができるようだな」
「お、『すまほ』から『スマートフォン』になった」
「私は、インターネットというものをしてみたい。パーソナル・コンピュータの使い方を教えろ」
「い、インターネット……」
だめだだめだ、笑っちゃいけない。無惨様は一生懸命なんだ。それに、私の思考は筒抜けだから、バカにするようなことを考えていたら、また首を切られたりするだろう。
(余計なことは考えない……考えない。ににんがし、にさんがろく……)
「……大丈夫か?」
「う……はい……」
仕方なく、私は座椅子とパソコンを彼に譲った。仕事も大事だけど、無惨様の命令を何より優先するのが十二鬼月の使命……だよね?
「インターネットを始めるには、このアイコンをクリックするんです」
「クリック……押すのか?」
「はい、このマウスでカチカチっと」
「マウス……ああ、これか」