第11章 無惨様、はじめてのインターネット
十二鬼月。それは、上弦の壱から下弦の陸までの12名で構成される、無惨様直属の部下。
……今はまだ、私一人だけど。
「わぁあ~。これ、本当にすごいですね……」
私は、鏡を見ながら感嘆の声を漏らした。どんな仕組みなのかはわからないけど、左目の瞳孔の部分に『下壱』の文字が現れている。
なぜ上弦の壱から始めないのかとは思ったけど、上弦の鬼はしばらく欠番にするとのことだ。……まあ、私は上弦を名乗れるほど強くないし、当然のことだろう。
「あくまでも、称号は暫定的なものだ。剥奪されないよう、私のために尽くせ」
「はぁーい」
ところで、さっき気付いたけど、鬼となった私の瞳は、元の茶色から澄んだ緑色に変化していた。それもあって、与えられた文字はとても鮮明に見える。
「なんかこれ、高性能なカラコンみたいですね」
「カラコン……カラーコンタクトレンズのことだな」
「それです!」
広辞苑のおかげで、無惨様は現代の言葉を少しずつ覚えてきたようだ。どうやら、昨日はあれから……私が気絶するように眠った後も、一人で起きてずっと読んでいたらしい。
ちなみに会社には、『体調が悪い』と伝えてお休みをもらった。このままずーっと行けないかもしれないことは……まだ言わなかった。
ただ、家のパソコンでできる範囲の仕事はやっておくことにした。退っ引きならない事情があるとは言え、急に休むのは申し訳なさすぎるしね……。
「無惨様ー。わたしこれから、ちょっとお仕事しますね。なのでー……できたらその椅子に座らせてほしいんですけど……」
「向こうでやれ。ここは私の席だ」
「えぇー……」
本当に暴君だなぁ。まあ、それでこそ無惨様なんだけど。
私はどうして、こんな男のことを一瞬でも『愛しているかも』なんて思ってしまったんだろう。……ああ、怖い怖い。『DV男に尽くしてしまう女』みたいにならないようにしなきゃ……。