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無惨様、令和に降臨す【鬼滅の刃】

第10章 ただ、孤独な生命を


 無惨様は淡々と話していたけれど、私には彼の孤独が痛いほど伝わった気がした。

 陽の光を浴びられないとわかったばかりの私ですら、これほどの絶望。

 なのに彼は、1000年以上も……気が遠くなるほどの時間を、絶望を抱えて生きてきたのだ。計り知れないほどの孤独と、闘いながら。

 いくら人間のふりをしようと、いくら鬼を作ろうと、本当の意味で彼を理解した者は、きっと誰もいなかったのだろう――


「……無惨様。わたしはあなたの味方ですよ」

 私だって、彼のことを完全に理解したわけではない。だけど、自然とこんな言葉が口からこぼれ出ていた。

「はあ? 何を急に。当たり前だろう?」
「日光を克服する方法を見つけるまで、いつまででもお側に居ます。協力させて下さい」
「……それも、当たり前だ。お前だって治したいと思っているところだろうしな」
「え、わたしは別に……」

 不思議なことだけど……たった今私は、『自分が治りたいから』という気持ちが完全に消え失せていた。
 ただ此処にある、孤独な生命を助けたいと――そう、強く願った。

 いつの間にか、涙は止まっていた。
 こんな身体にさせられて、人間としての生活を奪われ、私は彼を心底恨んでもおかしくない。なのに、どういうわけだか憎みきれないのだ。

 それは何故か? 自問自答する。

 尊敬? 畏怖? 憐憫?

 ……違う。
 私は、彼を愛してしまった……
 のかもしれない。

「ん……」
 そう気付いた瞬間、無惨様は髪を撫でる手をぴたりと止めた。……まずい。心の声は全部筒抜けだった。

「あの、今の、聞かなかったことにして下さい」
「何をだ。お前は一言も喋っていないだろう?」
「……もういいです。意地悪」
 頬を膨らませた私に覆い被さり、無惨様は髪に口付けを落とす。それから……耳元でこう囁いた。

「暫定的にではあるが……お前に、下弦の『壱』をやろう」



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