第10章 ただ、孤独な生命を
「克服したいと、思うだろう? だから私はずっと、その方法を探している」
「そう、だったんですね……」
「100年前、もう少しで手が届きそうになった。だからこの時代でも……探そうと思っている」
「はい……」
私には、短くそう答えることしかできなかった。ふらふらとベッドに戻り、大きく倒れ込む。
「……紡希」
「…………」
「また、眠るのか?」
「いいえ……。でも、しばらく、話ができる気分じゃ、ないので……」
無惨様はそれ以上何も言わず、ベッドの縁に腰掛けた。背中を向ける私の髪に指を絡め、そっと撫でる。一応、申し訳ないとは思っているのだろうか。
鬼って、こんなに不便な生き物だったんだ。こんな身体じゃ、もう今まで通り生きていくことなんかできない。会社に行くことも、友達と当たり前に遊ぶことも、その他にもたくさん――
「うぅ……」
気を抜くと、また涙がこぼれてしまう。そうしているうちに、無惨様は手遊びを止めずに話し始めた。
「私はずっと、人間のふりをして生きてきた」
「え……」
「100年前は貿易商として、普通に働いていた。妻や子どもを持ち、共に暮らしたこともあった」
「…………」
「姿を変えて、人間の子どもとして過ごした時期もあった。……それなりに、愛されながらな」
これは、何を言いたいんだろう。『お前も工夫すれば人間のふりをして生きられる』と言いたいのだろうか。だけど、そういうことではなかったようだ。
「だが、すべては見せかけだ。私は陽の当たらないところでしか生きられず……しかも人間は、皆私より先に死んでしまう」
「…………」