第9章 無惨様、シャワーを浴びる
色々ツッコみたいことはあったけど、私は部屋に戻った。……と、その前に無惨様のシャツを洗濯乾燥機にかけてあげた。濡れちゃったのは私のせいだしね。
気を取り直して、血液パックをひとつ開ける。お風呂上がりの血は本当に美味しい。……普通の人間なら、コーヒー牛乳とかビールなんかを飲むところなんだろうけど。
パックのままというのも味気ない気がしたので、グラスを出してみた。とぷとぷと注いでみると、まるで赤ワインのように見えなくもない。
「ふぅー。おいし……」
グラスを傾けてちょっといい気分に浸っていると、浴室のドアが開く音が聞こえた。
そして間もなく、肩にタオルだけを掛けた素っ裸の無惨様が何食わぬ顔で帰ってきて……私は飲んでいた血を吹き出しそうになった。
やっぱり相変わらず程良く引き締まった綺麗な身体をしてるし、髪が少し湿っていてそれが妙に艶かしいし……って、何考えてるんだ私!
「そ、そっか! わたしが洗濯しちゃったから……」
無惨様は着替えもないのに、私ったら何やってんだろう。何か、無惨様でも着られるような……大きめの男女兼用の服はなかったかな。
なんてあたふたしていると、無惨様は怪訝そうな顔をしてこんなことを言った。
「貴様は何故また服を着ている?」
「へっ?」
それから無惨様はさも当たり前のように歩み寄ってきて、私の頬に手を遣る。状況を理解するより前に、唇を奪われてしまった。