第7章 来るなって言ってんのに
止め処なく、涙があふれる。無惨様に対して、私を鬼に変えたことへの怒りと、役に立てなかったことへの不甲斐なさが同時に湧いてくる。
たぶん私の心は、鬼にも人間にもなりきれていないんだ。
「わたしは、何をやってもすぐに回復してしまう。でも無惨様なら、わたしに傷を付けられる……殺せるんですよね……? お願い、殺して……殺して……」
無惨様はしばらく棒立ちになっていたけれど、やがて長い溜め息を吐いた。
「……わかった。なら望み通りにしてやろう」
首に、異形の手が掛けられる。ごきゃごきゃっと、骨の折れる音。今までのような戯れではなく、本気で殺そうとしているのが伝わってきた。
「無惨様、ありがとう、ございます……」
……やっと、楽になれる。薄れ行く意識の中で、私はただ、そう思った――
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