第6章 空腹を満たすもの
「…………」
我に返ると、私は生まれたままの姿で、無惨様の右腕に腕枕されていた。
布団もシーツもそれなりに乱れていて、誰が見ても情事の後とわかる光景だ。
「……うわぁ」
……本当、何やってるんだ私。あれだけ拒んでたのに、結局こんなことになってしまうなんて。
「なかなか良かった」
「……はい」
情けなくそう呟くと、空いている左手で頭を撫でられた。
「お前を鬼にしてみて……最初は失敗したかと思っていたが、抱いてみると悪くないじゃないか」
「うぐ……」
ちょっとだけ嬉しくなってしまう自分もいて、つくづく嫌になる。穴があったら入りたい。ううん、いっそ消えてしまいたい……。
だけど、いつまでも自己嫌悪に陥ってはいられなかった。もっと深刻な問題が、私を襲ったのだ。
「なんか……めちゃくちゃおなかすきました」
「ん……」
唐突に訪れた、耐え難いほどの空腹。さっきまで大丈夫だったのに、どうして……?
「血が切れたんだろう。もともと、応急処置のようなものだったからな。むしろ、よくここまで持ったものだ。鬼は本来、人間の肉を喰わなければ空腹を満たせない」
「そんな……」
「服を着ろ。食糧を調達しに行くぞ」
「や……やだよ、人を食べるなんて」
「そうしなければお前は死ぬのだ。早くしろ」
「うぅ~……」