第4章 無惨様、アパートにいらっしゃる
ジャケットを掛け終えて無惨様の隣に腰を下ろすと、長い溜め息が漏れた。
……ああ、やっと、家に帰ってくることができた。
改めて、無惨様をまじまじと眺める。こうして見ている分には、人間の男の人と変わらない。……というか、よく見るとかなり整った顔立ちをしている。
(綺麗な顔。肌もすべすべだし、睫毛も長い……)
「……ほう?」
「あっ」
しまった、心が読めるんだった。一瞬でも見とれてしまっていたのがバレて、顔が熱くなった。
「姿など、鬼はいくらでも変えられるんだがな」
「え、そうなんですか? じゃあ、本当は全然違う顔ってことで……?」
「いや、そうでもない」
「ふぅーん……」
もともと綺麗なんだなぁ、羨ましい。
そう思ってしまったところで、無惨様はふっと笑った。
「そうか、お前にはそう見えるか」
「うぐぅ……」
もう、一切何も考えないようにしなきゃ……。心を無にしようと決めたところで、無惨様の細い指が私の唇に触れていた。
「な……?」
「少しぐらいなら、遊んでやっても良いぞ?」
薄い笑みを浮かべて、ねっとりとした視線を向けられると……全身が絡め取られてしまいそうで、ぞわっと総毛立った。
「いや、いらないです、そういうのはっ!」
私はスマホだけを引っ掴んで、さっとソファから立ち上がった。