第1章 小学生時代 ー三年生ー
冬休みが明けてからしばらく経つ。
二月に入り、気温は一桁になる事も珍しくない。
「ねえねえ心操くん、来週雪が降るんだって!楽しみだね、雪遊びしようよ!」
年賀状に書いてくれた「遊ぼうね」なんて優しい言葉は、きっと皆に書いているんだろうと思って本気にしてはいなかった。
覚えてすらいないのかもな、なんて考えて落ち込んでいた。
なのにみょうじさんはいっつも、俺を驚かせる。
俺はそのたびに喜んで、ドキドキして、少し、期待する。
いつかは俺の事を見てくれるんじゃないか、と。
「いいよ、どこで遊ぶの?」
「うーん、西公園は人気だから混みそうだよねー……。あ、ちょっと遠いけど、みどり公園は?」
「分かった。じゃあ雪が振った日の放課後、そこで遊ぼう」
「やったー!ありがとう!」
始めてみょうじさんと遊べる。しかも今のところ二人で。雪は冷たいけど、きっとこの子といたら暖かくて、寒さなんて忘れて遊ぶんだろうな。
雪が降るのが今ほど楽しみだったことはない。
その日の昼休み。
いつも通り班になって食べ始める。
「あだな、バレンタインもうすぐじゃない?告ったら?」
前に座る女子二人はもう恋バナに花を咲かせていた。
「えっ、いや、恥ずかしいよ!……一応、伝えるつもりだけどさあ……」
「おー!ついに!両思いだって分かってんのに何で告白しなかったの?」
「違ったら悲しいじゃん!」
違うわけないのに。見てれば分かる。相手の涼って奴は、いつもチラチラみょうじさんを見ている。
体育の時、かっこいいとこ見せようとして本気になっていたり、いつも無駄に話しかけたり、ちゃっかり肩や手に触れたり。
考えているとイライラした。
俺にはできない、そんなこと。