第1章 小学生時代 ー三年生ー
その日の昼休みはその話題で持ちきりだった。
給食を食べ終わったらすぐに校庭に遊びに行ってしまうみょうじさんも、今日ばかりは教室で給食の班のメンバーと何が良いか真剣に議論していた。
「いや、室内遊びならトランプ、UNO、人生ゲーム、王様ゲームの一択だろ!」
「それ四択になってるよ!?誰が持ってくるのそんなたくさんのゲーム。トランプ以外学校に持って来ちゃダメなんだよ」
「えー、つまんねえ!じゃあ王様ゲーム必須だね」
「心操くんは、何か思いつく?」
彼女のキラキラした目を今日は二回も見られた。
嬉しいなあと思って眺めていると、そのキラキラした目は俺に向けられている。
「え、俺は……」
まさか俺の方に向けられるなど想像もしていなかった。
さっき最悪だと思ったフルーツバスケットは避けたい。
それを伝えようと言葉を探すが、なんの心の準備もできないまま目を輝かせたみょうじさんの顔を見てしまったからうまく考えがまとまらない。
「心操なら全部つまんないって言いそうじゃね?」
ようやく返事をひねり出して椅子取りゲームじゃなければ何でも良い、と言おうとしたのを隣に座っていた男子が遮った。
「なんで決めつけるんだよ」
ついイラッとして、思ったことがそのまま言葉になって出てしまう。
「え?だっていつもつまんなそうな顔してんじゃん」
俺たちの間に一気に険悪な空気が漂い始めた。
まずい、喧嘩をしたいわけではないのに苛立ちが抑えられない。
みょうじさんの前じゃなけりゃもう少し冷静でいられたかもしれないが、俺は悪い印象を持ってほしくない一心で売られた喧嘩を買ってしまった。