第1章 小学生時代 ー三年生ー
そんなある日、唐突に先生が提案をした。
「そろそろ始業式から二週間が経ちますね。新しいクラスには馴染めてきたかな?あさっての三時間目と四時間目を使ってお楽しみ会をしようと思います。学級係さんたちはみんなの意見をよく聞いて、何をするか決めておいてくださいね」
すぐに元気のいい男子が質問をする。
「せんせー、校庭は使えますか!」
「四時間目なら空いていたと思いますから校庭での遊びも考えておいてくださいね。使えるものはクラスのボールだけですよ」
「はーい!」
みんな元気よく返事をすると一斉に騒ぎ始めた。
俺は運動神経も良くないしノリも良くない。皆は楽しみにしているが、俺は少し不安だった。
フルーツバスケットなんか最悪だ、気の利いたお題なんて出せるわけがない。
ドッヂボールは論外だ。
まわりから聞こえる楽しそうな声に心の中で文句をつけた。
「ねえ、心操くん!私明後日がとても楽しみ!心操くんは何したい、私はやっぱりドッヂボールがいいなあ!」
机と睨めっこをしていたらとんとんと肩を叩かれる。驚いて振り向くと、興奮気味に腕を振るこれ以上ないほど笑顔のみょうじさんが俺に話しかけていた。
俺は驚き、高揚する。
突然バクバクと力強く脈打ち始めた心臓の音が耳に響いた。
幸せでほころぶ口元を隠せない。
「……俺?俺も、ドッヂボール」
思い切り嘘をついたが、でも今の俺にとってはこれが本心だった。
彼女がそんなに嬉しそうにしているのなら、べつにドッヂボールでも良いかな、何て思ってしまった。