第1章 小学生時代 ー三年生ー
「え、どうしたの、だ、大丈夫?」
必死でおえつをこらえていたが、彼女に気づかれてしまった。
「うっ、ん。だい、じょうぶっ、だからっ!こっち、見ないで……」
冷たい風が目にしみる。
冷えきった体の痛みと、どうしようもない心の切ない痛みに、涙は次々とこぼれ落ちた。
仰向けに寝っ転がって空を見上げる。
その晴れ渡った青空でさえも、俺の切なさを助長した。
こんな情けない姿、見せたくない。
「ごめんね、ありがとう、心操くん……。遊んでくれて、ありがとう」
「え……」
始めて聞く彼女の弱々しい声に驚いて振り向く。
彼女の潤んだ目元からぽろりとしずくが一つ、こぼれ落ちた。
寒さで真っ赤に染まった頬を、大粒のダイヤのような涙のしずくがつうっと伝った。
「せっかく楽しみにしていたのにっ、台無しになっちゃって、ごめんっ……。悔しいよ……!」
そこまで言うと、ギュッと目を閉じて泣き声をこらえる。
「……いいよ、俺は、大丈夫。……みょうじさんが遊ぼうって言ってくれて、それだけで嬉しいから」
そっと撫でてあげたい。
大丈夫だよって、涙を拭いてあげたい。
「優しいなあ、心操くん……」
君は俺の言葉でこんなに嬉しそうに笑ってくれる。
俺だって本当はいくらでも話していたいのに。
君に、触れたいのに。
君には好きな人がいる。
それは俺じゃない。