第1章 小学生時代 ー三年生ー
西公園には人が沢山いたから、南公園まで走る。
まだここには誰も来ていないようで、積もった後のまっさらな雪の上に彼女は思いっきり倒れた。
手をつないだままだった俺もつられて倒れこむ。
あんな短時間でこんなに積もるのか。
まだ小さい小学生だから、雪に上に倒れこんでも怪我はしなかった。
横を向くと、楽しそうに微笑む彼女と目があう。
「……みょうじさん、ごめん」
上がった息を整えながらつぶやいた。
後悔と、場違いの喜びがないまぜになって、俺の頬に一筋の涙が伝う。
涼に、“好きな"人に、勘違いされるかもしれないのに彼女は。
俺を好きだ、と。
それが友達としてであって、決して恋愛感情は含まれていないのだとしても。
俺の心は十分救われ、十分かき乱された。
「謝んないで、涼くんのことは気にしなくていいよ。こんなの後で直接事情を話せば分かってくれるから」
彼女の優しい笑顔でこんなに優しい言葉をを向けられて、もう溢れ出す涙を止められなくなる。
幸せで嬉しくて。
それでいて、こんなに切ない。
“だって“個性”がヴィラン向き”
さっきの奴等の言葉が脳内でこだましていた。
俺の“個性”を知ったら、君は俺のそばから離れて行ってしまうのかな。
その切なくて、甘い気持ちになる大好きな笑顔を、俺には向けてくれなくなってしまうのかな。
そんなのいやだよ……。
好きだよ、みょうじさんっ……。