第1章 小学生時代 ー三年生ー
しばらくそうしていると、間の悪いことにいたずら好きな男子たちのグループがやってくる。
慌てて離れるが、遅かった。
「なーにやってんだよお前ら!これでもくらえ!」
そう言って近くにあった氷の塊を投げつける。
明らかに俺を狙っていたはずだが、変な形をした氷は予想外の方向へ飛んで行った。
「あ、みょうじさん!」
俺は叫んで彼女をかばう。
その拍子に二人とも地面に倒れ、雪まみれになった。
「あ、ありがとう……。雪フカフカだねー!転んでも痛くないや!」
「……うん、大丈夫?」
「へーき!」
ませている奴等は、俺たちを手を叩いてからかった。
俺の顔が真っ赤だとか、キスしてんじゃないか、とか。
「おいおい、お熱いなお二人さん。涼に言ったろ、みょうじが浮気してるって」
「はっ、しかも相手が心操。ウケる」
「やめてよ!」
「そんなに?心操が?好きなの?ははっ、涼の方がぜってー良いって、心操はやめとけ。だって“個性”がヴィラン向き」
「黙って。心操くんは大切な友達なの、好きに決まってるよ!あんたたちなんか大っ嫌い!」
みょうじさんは顔を真っ赤にして、もう泣きそうだ。
その横で、俺は何もできないでただ立ち尽くす。
みょうじさんは俺の事、友達って思ってくれているんだ。
俺の事を好きって、あんなに堂々と言ってくれる。
もうからかってくる奴の言葉なんか、少しも頭には入ってこなかった。
「心操くん、行こう」
「うん……」
彼女はこぼれそうになる涙をガシガシ拭いて、俺の手をとって駆け出した。