第1章 小学生時代 ー三年生ー
遊び始めてまだ二十分。
無言でせっせと雪をかき集めては丸める。
俺たちは雪だるま作りに夢中になっていた。
「心操くん、土台作り手伝って!」
「うん。これあげる」
自分が丸めていたのを手渡すと、わあもうこんなに、と喜んでくれた。
おそらく防水手袋と思われるゴツい手袋を着けている。遊ぶ気まんまんだ。
対して俺はごく普通のミトン。
もう既に溶けた雪が染み込んで手先は、感覚が麻痺しそうなほど冷えきっていた。
はーと息を吹きかけ温めるがほとんど効果はない。
チラリと時計を見ると、まだ一時間弱も遊べる。
こんなことでせっかくの時間を無駄にしたくない。もはや痛みさえどうでも良い。
俺はただ、みょうじさんを喜ばせたい。
意を決して雪に手を突っ込んだ。
「……心操くん、手、出して」
なんだろう。
手を差し出す。
「手袋外して」
そう言ってみょうじさんも手袋を外した。
言われたとおりに外してもう一度手を出すと、グイッと手を引き寄せられる。
「冷たい。……ごめん、無理してたんだね……」
「え、いや俺は」
「私の手、暖かい?……ダメだ、もっと暖かくしないと」
俺が戸惑っているうちに彼女に引き寄せられ、気づけば俺はみょうじさんの首筋に手を添えていた。
寒さで赤くなった頬。鼻頭も唇も赤い。
それに心配そうに覗き込む表情。
俺はあまりに近い距離でみょうじさんにジッと見つめられているこの状況に、クラクラとめまいがしそうだった。
「……俺の手、冷たくない?」
「ううん、心配しないで。……ありがとう」
二人してうつむく。
手先は冷たいのに、顔も体の中も真夏のように熱い。
「……もう少し、このままで……」
彼女はうつむいたままコクリと頷いた。