第1章 小学生時代 ー三年生ー
止みそうにもなかった雪が、帰る頃には嘘のように止んでいた。
澄み渡った空に、フカフカの雪。
俺たちはザクザクと真新しい雪に足跡を付けながら帰った。
「じゃあ、いったん帰った後、すぐにみどり公園にいくね!」
「うん、またあとで」
雪のせいで足がもつれそうになりながら走って家に帰る。
ランドセルを投げ出してすぐに家を出た。
公園に着くときには既に息が上がっていた。
体力がないのは分かっているが、時間を一秒でも無駄にしたくない。
バレンタインデーの翌日には、みょうじさんと涼は恋人になっていた。
それなのに、約束を守って俺と遊んでくれる。
本当は涼とかいう奴と遊びたいって思っているのかな、と考えてしまう自分が嫌になった。
みょうじさんはそんな人じゃないって分かっているのに。
俺の心は嫉妬心と愛しさでかき乱されている。
「あ、走ってきたの?私もだよ!雪だるま作ろう、かまくらも作ろう!雪がいっぱいだー!」
大はしゃぎで雪をまき散らす様子が可愛くて、思わず微笑んだ。
それだけでさっきまでの暗い気分がいっきに吹っ飛ぶ。
そうだ、そんな暗い嫌な事は忘れて今は思いっきり遊ぼう。
今は、今だけは、みょうじさんが俺だけを見てくれているんだから。