第1章 小学生時代 ー三年生ー
バレンタインデーも終わり、週末をはさんで二月の中頃。
俺たちの街に遅めの雪が降った。
三時間目の授業中、真っ先に気づいた男子が叫んだ。
「おい見ろよ、雪だ!」
「あ、ほんとだ!綺麗!」
「そうですね、ほら、授業に集中してください」
そんな先生も言っても無駄と分かっているのか、しばらく外を眺めている。
皆お喋りを始め、教室の中は暖かい空気に包まれた。
窓の方を見るふりをしてみょうじさんの方を眺めていると、目をキラキラ輝かせて振り向く。
「心操くん、これ、積もるかな、積もったら遊ぼうね!」
「うん、楽しみだね」
積もるといいな、と心から願った。
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俺たちの願いは無事届き、本降りになって雪が積もりだす。
昼休みに給食を食べながら皆口々にやったあとか、帰れるとか、遊びたいとか叫んでいた。
「放課後までに沢山降って、それで止んでくれたらいいなー。早く心操くんと雪遊びしたい!」
「……俺も、早くみょうじさんと遊びたい」
勇気を振り絞って言った一言。
それを聞いて彼女は元々輝いていた目を、さらに嬉しそうに細めてくれる。
「うれしいよ、心操くん……!」
返ってきた言葉に、俺は叫びそうなほど喜んだ。
本当に嬉しそうで、少し赤い頬は、彼女が心から喜んでいる事をそのまま表していた。
体中に力が沸き起こって、もうどうにかなりそうだ。