第1章 小学生時代 ー三年生ー
不安と期待が混ざり時間は矢のように過ぎた。バレンタインデー当日がやってくる。
「……なあ心操、ひょっとしてだけど、お前西公園に行きたいんじゃねえの?」
三人の友達と遊び始めて十数分。
落ち着かない様子の俺にしびれを切らしたか、ついに颯太に尋ねられてしまう。
「いや、……うん」
「え、まさかお前あの騒がしい女子の中に好きなやつがいんの?!」
「違う。ほんとに」
とっさに全否定した。
「ふーん、まあいいけど。じゃあ素直じゃない心操のために偶然を装って西公園にレッツゴーだ」
「だから、違う」
「まあまあ。ほら行くぞ心操」
ありがとう、本当に。言えないけど、良い友達を持ったと思う。
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俺たちが西公園に着いたころはもう配り終えた後だったようで、皆お互いのお菓子を食べ比べていた。
「あ、颯太君たちが来たよ!」
「あー、ごめんあんたたちの分は無いや」
みょうじさんはまだ涼という奴と喋っていて俺たちに気づいていない。
代わりに他の女子がこっちに手を振っている。
俺は高ぶる感情を抑えきれなくて、のろのろ歩く颯太たちをおいてみょうじさんの方に近づいた。
「あ、心操くんだ!皆でここで遊ぼうよ!」
すぐに気づいて、好きな奴との会話を中断してこっちを向いてくれる。
それだけでも嬉しいのに、一緒に遊ぼうなんて。
やはり勘違いせずにいられない。
いつか俺の事を見てくれるのではないか、と。
「俺も、チョコもらって良い?」
気づけばこんなことを言ってしまっていた。