第1章
「……っ!!」
シュゥゥゥゥゥゥゥ…ッ
ガタンッ!ガタガタッ!
戸は既に固められているのか、引き戸も裏口もびくともしない。そうこうしている間にも、小刀の柄(え)からは火花と煙が勢いよく噴出してくる。
白い煙が黄土色に変わると、刺すような痛みで涙が止まらない。
「キッ!キッ!」
「…っ、クナイ…!」
小さな穴からクナイを逃がし、噎(む)せ返りながらカラクリ床の裏側へ滑り込んだ。
「ハァ、ハァ、ハァ…ゲホッゲホッ…っ、ハァ、ハァ」
上昇していく煙を避けたのは正解だったが、涙はまだ止まらない。手足の痺れはないが、喘息のようにヒュゥヒュゥと嫌な呼吸音がして、うまく息が出来ない。
(敵襲に気付かないなんて)
仮拠点とは言え、敵襲に備えていち早く気付くための装置は点在させてあった。普通ならまず間違いなくここには到達できないはずなのに。
(…おかしい、なにか………、っ!)
ゆるりと床板が軋んだ。