第1章
ヒュンヒュンヒュンヒュン…
ヒュンヒュンヒュンヒュン…
「…………」
「…………」
佐助が目を休めている間に伊稚、白鹿、雨乃が男たちと対峙している。
腹の探り合い、隠し手の読み合いが忙しなく行われ、鎖が空(くう)を切る音以外、どちらも動く気配がない。
唯一、佐助の目を見た雨乃だけが、敵の正体に当たりをつけていた。
「気を付けろ。目が死ぬぞ」
口布で悟られない程度の声で二人に伝える。聞いた二人にも動揺は見られない。
「てことは、やつら」
「独眼竜の黒脛巾組(くろ はばき ぐみ)だ」
ボフン!!
俊敏な動きで投げつけられた火薬が小爆発を起こし、見る間にあの煙が立ち上る。雨乃たちは風下にいた。
「ちっ」
雨乃は佐助の元まで下がり、散り散りに飛んだ伊稚と白鹿を追いかけて4人が散った。
ノロノロ追いかけてくるとはいえ、目を痛めた佐助を連れて退くのは、容易ではない。
「雨乃!」
「黙ってろ…!失明したくなきゃ目を開けるな!口塞げ!!!!」
急に風に乗った煙が二人を包み、煙を多く吸い込むまいと腕で口許を庇う。
淀んだ色味で視界が悪い。