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空白の記憶

第2章 Story-0 empty


その二人の後ろで立ち止まっているのが、さっきの彼女。
白いワンピースに裸足、長く腰まである桃色の―さっきまで解いていた―髪を三つ編みにしていた。
白いリボンで留めている。
赤い目は透き通り、僕の心を透かして見てやろうとしているように見えた。
その登頂部には、不自然に撥ねた髪の毛がある。
彼女は黙って、僕を見つめている。

「カラシロ、俺が誰か解るか?」

突然、着物の人が言った。僕は首を振る。
するとその人は。
僕の座るベッドの下を探り、線の入った紙と黒いシャープペンシルを出す。
…なぜ、こんなところにあるのか。
その紙の上に着物の人は“天竺牡丹”と書いた。
カクカクとした字だった。

「俺の名前は“天竺牡丹(テンジクボタン)”。
“ダリア”って呼んでくれても構わない。」

そう言って、今度はその下に“Dahlia”と書く。
僕が小さく「牡丹。」と呼ぶと、ほんの少しだけ口角を上げ、すぐ戻した。
感情表現が苦手な様だ。
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