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空白の記憶

第2章 Story-0 empty


「僕は…空白。」

シャープペンシルを借りて、紙に書く。
…小さく、読み辛い字だ。
牡丹が、小さく「空白。」と呼んだので僕はそっちを向いた。
くすぐったい気持ちになった。

「お前、家何処なんだ?」

牡丹は男なんだと思う。
その唇から溢れた響きから、凛とした力強さを感じた。
僕は「何処だと思う?」と言ってみた。
…解らないとは答えられなかった。

「…気が向かないとき以外はさ。この部屋、使えよ。」

目を細めて、牡丹が言う。
僕は黙って頷いてから「この部屋、誰の部屋?」と尋ねてみた。
斎が答えた。

「いつきの部屋!」

僕は斎わ指差してから、首を傾げた。彼女の名もまた“いつき”だ。
しかし、僕の事を見つけたときも“いつき”と呼んだ。
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