• テキストサイズ

空白の記憶

第2章 Story-0 empty


「私は“ハムラマアヤ”って言うのよ。」

牡丹からシャープペンシルを奪って黒髪の少女は紙に“羽村真綾”と書いた。
くしゃくしゃの、画と画の間に線の残る字だった。
僕が小さく「真綾。」と呼ぶと、にっこり笑って「なぁに?」と言った。
作り笑いなのは、すぐ解った。

「私も…書くべき?」

真綾と牡丹の後ろに、いつまでも立っていた彼女が、口を開く。

「お前がカラシロに名前を呼ばれたくねぇなら、いいけどな。」

牡丹が言う。
彼女は眉間にシワを寄せてから歩いて来て、書き始めた。

「私は、“タダサキイツキ”…。」

紙に“唯崎斎”と書いた。
真綾と同じような字だった。
僕が小さく「斎。」と呼ぶと、悲しそうに笑って「うん。」と言った。
僕には、彼女の事が解らなかった。
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp