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空白の記憶

第2章 Story-0 empty


「落ち着けよ、いつき。」

男の様な、低い声がする。僕に向けたものでないのは解った。

「みーちゃん、彼は“カラシロ”と名乗ったんでしょ?」

今度は少しだけ高い声がした。
みーちゃん、それからいつき。
二つの名前が出てきた。

「落ち着いてる!…カラシロ。本当にいつきじゃないのかな…?」

次の声。さっきまで手を引いていた彼女の声がする。
二つの名、どちらも彼女の名なのか。

「いつき…。アイツだとして、本当の名を名乗ってくれねぇ理由がわからねぇ。アイツの性格上、むしろお前を喜んで捕まえるだろ。」
「そう…かなぁ。」
「そうよ!いっちゃん、みーちゃんの事大好きだったんだから。」

三人の会話をこのまま聞き続けるか。僕は正直迷ったが、起き上がることにした。

「!カラシロ、起こしちゃった?」

彼女の声に僕は首を振ってから、三人を見る。
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