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空白の記憶

第2章 Story-0 empty


繋いだ手も温まってきた頃、大きな建物の前に着いた。
マンション。焦げた茶色の肌をしている。
磨りガラスの両開き扉を、彼女は大きく開けた。

「こっちだよ。」

言われなくても、引っ張られているのだから着いていくのに。
そう考えてからもう一度思う。
…さっきより物事を考えている。
銀のパネルにパスワードを打ち込む彼女をじっと見る。
…全く手を離さない。


――もう離さないから。


「…!」

白い心に突然、彼女の“声”が弾けた。
軽く、頭から腰へ痛みが走った。

「…。」
「空白?どうしたの?」

彼には、その声は届かなかった。
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