第2章 Story-0 empty
肩にあったのは、黒い髪の束だった。
赤いリボンで纏められた、黒い、自身の髪。
彼は、それを何故か不快だ。と思った。
不快を我慢できるほどに、彼の心は詰まっていない。
斬ろう。白い心の中に、灰色の文字が浮かんだ。
彼はそれを、手に取った紙にポツリと書かれた文字のように認識しながら、解っているように願った。
「この右手に…短刀を…。」
重たい口を、パクリと開いてそう呟き願った。
それに、応じるように。
パッと開いた手に短刀が握られた。
どうやって現れたのか解らない。
しかし彼にそれを気にする心は詰まっていない。
当たり前のように握ったそれで、横一文字に髪を斬り裂いた。
赤いリボンも一緒に斬れて舞い公園の固い地面に落ちた。
柔らかく低い髪の山に見向きもせず、彼は短刀をポイ捨てするように捨てる。
短刀は宙で、幻だったように消えた。
彼はそうして、歩き始めた。