第2章 Story-0 empty
0-2 空の一日目
深い深い意識の海から唐突に抜け出して、目を覚ましたのは公園だった。
無人の、夜明け前の公園。
ブランコの、キィ…。という音が、静かな中で目立つ。
そのブランコの前に立っていた空白は、ぼぉっとその景色を見つめていた。
ここは何処だ。自分は誰だ。
そんな疑問はなかった。
ただ、今から何をしようかと、それを考えてブランコを見つめる。
誰も乗っていないブランコ。キィ…キィ…と音を立て、前へ後ろへ揺れ動いた。
風もさほど吹いていない。なんとも怪奇的な景色だった。
彼はそれを、静かに見つめている。
黒く長い上着が、白い開襟シャツを隠してしまい、彼は真っ黒な影だった。
黒い姿と反対に、真白な記憶。
とにかく、ここにいても何にもないと判断して、歩くことにした。
反対に振り返り、歩こうとした時。
パサッ。
肩で音がする。彼は不思議だと感じ、肩に触れた。