第2章 夏はまぶしい季節です。
その後、高橋さんがテーブルにお茶とお菓子を用意してくれている間、今泉くんはトイレに立ってしまった。
先ほどとは種類の違う静寂が広い部屋の中に満ちる。
用意を終えると高橋さんは私に向けてまた微笑んでくれた。
「あなたは……失礼ですが、ぼっちゃんとお付き合いされているのですか?」
「え!!!」
思った以上に大きな声が出てしまった。
まあ、高橋さんからしてみれば女子が一人で男の子の部屋に上がり込んでいるのだからそれ相応の関係だと思うのが普通だろう。
そう思い直し、とりあえず今日こうなった経緯を簡単に説明した。
「そういうわけで…すみません、彼女でもないのに女子一人でお邪魔しまして…」
「いえいえ、とんでもない!ぼっちゃんは昔からなかなか家にお友達など呼ばないので…ましてや女の子なんて。」
「あ、そうなんですね。」
「是非ぼっちゃんと仲良くしてあげてください。あなたのことをとても好いておられるようだ。」
「あ………そ、それはどうもありがとうございます…!嬉しいです。」
何を見て今泉くんが私のことを気に入っていると判断したのかは分からないけど、返した言葉通りとても嬉しかった。
なんだか恥ずかしくて視線をあちこち彷徨わせていると、部屋に入ったときは気付かなかったあるものを見つけた。
ローラーとは反対方向の隅にある勉強机の上には私の貸しているDVDが入った紙袋。
貸しているのだから当たり前なのだけれど、ああして私の持ち物が彼の部屋にあるということが何だか不思議で、くすぐったく思えてくる。
DVDだけは私よりとっくに先に、この部屋にお邪魔していたのだった。