第2章 夏はまぶしい季節です。
「アカン!!………な、なんやー!??!なんや、今ココ少女漫画の世界になっとらんー?!パーマ先輩そういうキャラちゃうでしょー!!?背筋凍ったわ!!」
「うわああああ、ヒロインに露骨にアピールする先輩キター!!!これはあれだよね、ヒロインを巡って争う構図だよね!どの色を選ぶかで必然的に誰を選ぶか決まる!たぎる!たぎる展開だ!!」
「お、落ち着け小野田……。鳴子はともかくお前まで……。確かにここでにピンクを選ばれるとすげぇ複雑ではあるけどよ……。」
「普段から身につけてるヘアアクセとか持ち物見てればなんとなく好きな色分かるもんだろ?観察が足りないんじゃないのか、お前ら。それとも自分の色に染めたい欲のが強いか?そういうのは独りよがりっていうんだぜ。」
ぐうの音も出ない三人を見てフッと笑った後、手嶋先輩は鞄を持って席を立つ。
「……え、ちゃんがどの色選ぶんか聞いて行かんのですか?」
「俺ら全員違う色推してるのにだって答えにくいだろ。俺は自分の予想が当たってたってだけで満足だからさ。じゃあな。気をつけて帰れよ。」
手嶋先輩は最後に私と視線を合わせると柔らかく微笑んで部室を出ていった。
先日から思わせぶりな言動が多い手嶋先輩だから、私はつい目が合って微笑まれるだけでもドキッとしてしまう。
さっきの発言も、普段からよく私のことを観察していて、その上で選びそうな色を予測できたということなら、本当に自分が思う以上に手嶋先輩に色々見られているということなのかもしれない。そう思うと、嫌でも背筋が伸びる。
でも、何故だろう。
見透かされるのが心地良いと感じてしまうのは。
鳴子くんが何事か隣で騒いでいるけれど、それすらもあまり耳に入って来ない。
自分の気持ちに答えが出ないまま私は、先輩が出ていった後も閉まった部室のドアをぼんやりと眺め続けてしまうのだった。