第2章 夏はまぶしい季節です。
先程彼が十分すぎるほど空けた間隔は一緒に勉強する者同士としては不自然過ぎる。
いちいち真隣に座ることにすら許可を取ろうとする今泉くんに笑ってしまいそうになるけど、本当に照れた様子で視線を伏せるから、なんだかこちらにまで恥ずかしさが伝染してしまう。
今泉くんがここまで女の子に対して免疫がないとは思わなかった。
「う、うん………」
私も何だか照れてしまい、今泉くんから視線を外しながら答えると、ゆっくり彼が真隣に腰を下ろす。
「………」
なんとか隣に収まった彼が、私の名前をポツリと呟く。
それに反応して今泉くんの方に顔を向ければ、彼は真剣な眼差しでこちらを見つめている。
「……………………」
言葉を発することもできず、広い部屋に静寂が満ちる。
今泉くんの目があまりにも真剣なので、今度ばかりは私も視線を外せない。
どれくらいお互いを見つめていたのだろうか。
その静かな時間は、突然の部屋のノックで突如として終わりを告げる。
乾いたノックの音が響いた瞬間、二人して大げさに肩を震わせ、同時にドアの方に顔を向けてしまった。
「ぼっちゃん、お茶のご用意が…」
「用があるときだけ呼ぶと言っただろ高橋!!」
「そうは言いましてもお茶も出さずには…」
「わかった……わかったから入ってくれ。」
見るからにうなだれた今泉くんは「悪かったな、最初にお茶も出さねぇで…」と私に謝る。
「え、いいよ気にしないでそんなの。」
私がそう返すも、彼はまた軽くため息をつく。