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【YP】明日もきみは風になる。

第2章 夏はまぶしい季節です。




「ねぇ今泉くん、さっきの人って…」


「ああ、高橋か。俺が小さい頃からこの家で働いているんだ。」


「そ、そうなの…」


「それがどうかしたか?」


「あ、ううん。なんでもない。」


幼少期からこの状態だったなら、今泉くんにとってはこれこそが日常なのだ。
もうあまり珍しがるのはよそう、と心に決める。


「さてと、じゃあ始めようか…」


「そうだな、気は進まないがやるしかないしな…。」


二人で勉強道具を取り出し、プリントの山にとりかかる。
とりあえず話し合いの結果、分量の多い数学から始めることにした。


「私数学って苦手なんだよね…今泉くんは?」


「普通、だな…特別好きでも嫌いでもない。」


「えー、なにそれ、それって苦手じゃないってことだよね。いいなあ。早速わかんないところあるんだけど…」


「どこだ?」


「これ、問2…」


今泉くんは、私が指し示した問題に視線を落とす。


「ああ、これは……こういうことなんじゃねぇか。」


そう言って向かいの席から私の隣の席に移り、自分の解答済の問に対する説明を始めた。


向かいの席からだと文字が反対方向になってしまうので教えてもらうにはお互いやりづらい。
その理由あっての移動だと頭で理解してはいるものの、今泉くんが至近距離に腰を下ろしたときは思わずドキッとしてしまった。



よく考えると今までで一番近い距離にいるかもしれない。
今泉くんは鳴子くんのようにパーソナルスペースに入ってくることがほとんどない。ましてや直接触れてくることなど一度もなかったので、手を伸ばさずとも触れられるような距離を何となく意識してしまう。

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