第2章 夏はまぶしい季節です。
「小野田達、急だったな。」
「うん、なんか二人ともお家ののっぴきならない事情ぽくてね…」
「……………」
「……………」
「あ……ええと、じゃあ私帰るね?なんかごめんね、こんな感じになっちゃって。良かったらこれ、つまらないものだけど……」
手渡すか迷ったけど、このまま持ち帰るのも忍びなく。
結局手渡すことにしたまったく釣り合いの取れていないクッキー。
私の差し出したそれを今泉くんは困ったように眺め、少ししてから静かに口を開いた。
「………が嫌じゃなければ…やっぱ上がってかねぇか?」
「え?」
「いやその、プリントやっておかねぇとまずいだろ。一人より二人のほうが捗るだろうし…その……。男の部屋一人で入るのとか警戒するかもしんねぇけど、別にやましい事とか考えてねぇから…!」
の好きそうな菓子とかも用意したし、あんなの一人で食いきれねぇから…と、尚もボソボソ続ける今泉くん。
慎重に言葉選びをしている感じがビシビシと伝わってくる。
せっかくここまで来た上に手土産まで貰ってそのまま帰すのも忍びないということだろうか。
それにしても、なんとかこの場を保たせようとしている今泉くんが可愛くて、私はつい笑ってしまった。
「な、何笑ってんだよ…!」
「へへ、ごめん。いや実を言うとね、こんなすごいお家だと思ってなかったから手土産釣り合ってないなってちょっと気後れしちゃって…」
「そんなこと気にしなくてもいいぜ。どうせ鳴子が来てたとしたら手土産なんてたいしたもん持ってきてなかっただろ。」
「はは、そうかな…?」