第2章 夏はまぶしい季節です。
え、じゃあ私だけじゃん、今日。
再び目の前の豪邸を見上げる。
どうする?自分も何かしら理由を見つけて帰ったほうがいいだろうか。
手土産の件もそうだけれど、付き合ってもいない男の子の部屋に女子一人で上がるというのもなんだか気が引ける。今泉くんだって気を遣うだろう。
それにこんなことが他の部員に知れたら幹だって誤解してしまうかもしれない。手嶋先輩との会話で今泉くんの気持ちに気付いてからは、日々私なりに気を遣って二人を近付けるような工夫をしていたりするのだった。だから今日も彼女を誘ったのだけれど、生憎予定が合わなかった。
幹は今泉くんに対してまるっきり気持ちがなさそうではあったけど、それでもいらぬ誤解は避けたいところだ。
断ろう。
そう決心して今泉くんに電話をかけようとした時だった。
また携帯が振動する。
着信相手の名前は、もちろん「今泉俊輔」。
「も………もしもし」
「ああ。もうすぐ集合時間なんだがまだ誰も来てないんだ。もしかして迷ったりしてんじゃねぇかと思って電話したんだが……大丈夫か?」
「あ、あの……今家の前にいるんだよね。」
「そうなのか、じゃあ今から出る。」
「あー!いや、あの!」
「?」
「今日は、中止にしよう?!」
「??なんかあったのか?」
「実は今連絡あったんだけど小野田くんと鳴子くん来られないみたいなんだよね。」
「小野田と鳴子が…?」
「そういう訳だから、えーと…」
「ちょっと待て、どっちにしろ行くからそこで待ってろよ。」
そう言って一方的に電話を切られてしまった。そして程なくして今泉くんが出てくる。