第2章 夏はまぶしい季節です。
「どうしよう、かな………」
チャイムを押す勇気がなかなか出ないでいる間に、手に持っていた携帯が振動した。
大袈裟に身体を震わせた後、恐る恐る着信を確認する。
「鳴子くん………?」
電話に出ると、いつもの賑やかな大きな声がスピーカーから溢れてくる。
「もしもしちゃんか?」
「うん、どうかした?」
「ホンマ堪忍や、ワイ今日そっち行かれへん!」
「ええ?!どうしたの?」
「弟が急に熱出してなあ、家のこと手伝わなならんようになったんや。」
「そうなんだ…弟くん心配だね、お大事にしてね。」
「ああ、ありがとうな!で、小野田くん達とやったプリントの答えなんやけどー…」
「大丈夫、見せるし分かった範囲で教えるから安心して。」
「さすがちゃんや、おおきにー!!これで安心して看病専念できるで。」
「うん、任せて任せて。また学校でね!」
鳴子くんからの電話を切って肩を落とす。
「鳴子くん、来ないのかあ…」
そう呟いた直後、またもや私の携帯が震えだす。
画面を確認すると、表示された相手の名前は「小野田坂道」。
嫌な予感しかしなかった。
「も、もしもし小野田くん…」
「もしもしさん?あのね、ごめん!僕今日家の用事で行かれなくなっちゃった、本当にごめんね!!今泉くんにも言っておいてもらえるかな?」
お母さんが云々と、来られない理由を必死に説明していた小野田くんだったけど、申し訳ないけれどまるっきり耳に入って来なかった。