第1章 春は出会いの季節です。
先輩のことが心配で追いかけてきたのに、何故か今私は逆に先輩に心配されてしまっている。
逆に気を遣わせてしまったようで、なんだか心苦しかった。
「ありがとな。気にかけてくれたんだろ?昨日のことがあったから…」
「いや、でも……結局先輩に気を遣わせて…。ごめんなさい。」
「そんな謝るなって。女子がここまで自分のこと気にかけてくれて嬉しくないやつなんてそうそういねぇから。」
「そうですか…?」
「そうだよ。それに俺にとってはタイプの女子だぜ?」
手嶋先輩はそう言いながら明るく笑う。
きっと、無理して笑っているんだろう。
わざと茶化して、この場を和ませようとしているように私には見えた。
「おいおい、今の笑うとこだぜ?」
「あ…ごめんなさい。」
「頼むからもう謝るなって。俺がいじめてるみたいだろー?」
「ごめんなさ…」
「だから。」
手嶋先輩のひとさし指が私の唇を軽く押さえる。
「そろそろストップ。」
「……!」
「…………もしかして昨日泣いたか?」
「……………」
今日初めて至近距離で私の顔を見た手嶋先輩がぽつりと呟く。
肯定するとまた気を遣わせるし、否定するのも嘘くさい。そう思い、あえてリアクションを取らなかったけれど、きっと先輩にはバレバレだろう。